お知らせ

(内閣府調査)企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について

2022.8.15

 

内閣府がみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社に委託した「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」の調査結果が2022(令和4)年3月にまとめられています。


「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」
(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社のホームページに飛びます)


熊本県でも企業主導型保育所で医療的ケア児を受け入れているところがあり、調査結果を興味深く拝見しました。受入れにあたっての課題として最も多く挙げられたのは、「医療的ケア児や医療的ケアの基礎知識がない」で、全体の3分の2を占めたとのことでした。また、医療的ケア児の受入れ施設においても、半数の施設は医療的ケア児支援センター及び医療的ケア児等コーディネーターを「知らない」と回答しているとのことです。まずは熊本県内の企業主導型保育所においても医療的ケア児とはどういう子どもたちなのか、受け入れるためにどうすればよいのか、といった研修を実施する必要があると考えました。一方で企業主導型保育所として受けなければならない研修が多数あるため、医療的ケア児の受入れに対する支援等も特段ない現状では、研修が用意されたとしても受講の優先度は低いという声も見受けられた、とのことで、これも尤もな声と言えます。すでに認可保育施設等においては看護師等の配置に対する補助といった支援が国主導で行われており、認可外保育施設である企業主導型保育所においても医療的ケア児受入れのための支援体制を国レベルで検討していく必要があると考えます。

企業主導型保育所は設置企業が訪問看護ステーションや病院などの医療機関の場合、一般の認可保育所より医療的ケア児の受入れに対するハードルが低い場合があることを経験します。認可保育所における医療的ケア児受入れも思うように進まない現状において、企業主導型保育事業と連携して医療的ケア児支援体制づくりを進めていくとよいのかなと思います。

以下、調査結果のPDFから概要のみを抜粋します。全文は100ページを超えますが概要のみでもお目通しください。

文責
2022年8月15日
熊本県医療的ケア児支援センター(熊本大学病院小児在宅医療支援センター)
副センター長 小篠史郎

 


<医療的ケア児受入れの取組状況・事例に関するアンケート調査の実施>

・調査時期 令和3年12月~令和4年1月
・調査対象 調査時点で運営費の助成を受けている企業主導型保育事業の実施施設3,687件
・調査方法 ウェブ調査
・調査内容 医療的ケア児への対応状況、受入れ状況、受入れにあたっての課題・展望等など
・有効回答数 1,381件(有効回答率37.5%)

 

【調査結果のまとめ(一部)】
・医療的ケア児の受入れについて相談を受けたことがある施設が回答者全体の1割強、実際に医療的ケア児の受入れを行った経験がある施設は28施設(2.0%)であった。
・すでに医療的ケア児を受け入れている施設、受入れを検討しようとしている施設も含め、受入れにあたっての課題として最も多く挙げられたのは、「医療的ケア児や医療的ケアの基礎知識がない」で全体の3分の2を占めた。
・医療的ケア児に関する相談先として期待される医療的ケア児支援センターや医療的ケア児等コーディネーターの認知度はそれぞれ2割未満となっており、実際に入所相談を受けたことがある施設でも、受入れの検討体制は自施設の職員が中心であった。

 

<医療的ケア児の受入れに関するヒアリング調査の実施>
アンケート調査の結果を踏まえ、医療的ケア児の受入れ検討の過程や受入れ時の取組、課題点等について詳細な情報収集を行うため、1医療的ケア児の受入れを行っている施設、2入所相談を受けたが受入れを断念した施設、3今後受入れを検討している施設(計10施設)へのヒアリング調査を実施した。

【調査結果のまとめ(一部)】
・受入れ施設における医療的ケア児の入所相談の経緯は、保護者からの直接相談や過去につながりのある関係機関等からの紹介により、利用定員の地域枠への相談を受けたケースが中心であったが、中には自社の従業員の育児休業復帰に伴い検討が行われたケースもあった。
・医療的ケア児の入所相談を受けた際の受入れ判断の検討体制は、基本的には施設と保護者との間での面談等による情報収集が中心となっている施設が多く、連携先や相談先が分からないという課題も見受けられた。
・医療的ケア児の受入れを行っている施設では、病児保育のために配置されている看護師等が、その業務に加えて医療的ケアの実施を担っているケースが多かった。また、看護師等の配置以外にも、施設全体として基準よりも手厚い職員体制がある施設が多かった。
・日常の保育の場面では、医療的ケアの必要性に関わらず、食事、散歩、午睡、自由遊び、集団活動といった様々な場面で、すべての児童が一緒に活動を行っているという施設がほとんどであった。

 

<企業主導型保育事業における医療的ケア児の預かりに関する論点の検討>
・医療的ケア児支援に取り組む施設への行政による支援は、主に認可保育所等を対象とする形で展開され始めているが、企業主導型保育事業では、施設利用者の保護者と設置者である企業等が近しい関係性にあることや、比較的小規模な施設が多いという特性を活かし、本事業ならではの支援を展開できる可能性もある。
・企業主導型保育事業では利用契約にあたっての受入れの判断基準は設置者に委ねられるが、医療的ケア児の入所相談に対し、施設が検討を行う上での前提となる基本的知識を得るために、実施施設が受講できる教育研修メニューでの情報提供や、受入れ施設における具体的な保育場面での実践方法等の先行事例を周知することが有効と考えられる。
・受入れ施設における医療的ケア実施の体制整備のために、必要なコストへの支援が行われることが順当と考えられる。また、施設のバックアップ体制を確保するために、医療的ケア児をはじめ個別的なケアを必要とする児童の支援について、市町村の保育所管課や障害福祉所管課等の関係機関との連携を特に密に行うべきことを周知することが望まれる。

 

「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)より抜粋