文部科学省から「令和3年度 学校における医療的ケアに関する実態調査」が公表されました(2022年7月)
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2022.7.12
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2022年7月、文部科学省から「令和3年度 学校における医療的ケアに関する実態調査」が公表されました。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/1402845_00005.htmこれまでなかった調査内容として1つ目は、スクールバス等の「医療的ケア児の通学方法についての調査」です。特別支援学校において24%の医療的ケア児がスクールバスで通学しているとのデータでした。もう1つは「教育委員会におけるガイドライン等の策定状況」についての調査です。医療的ケア実施体制に関するガイドライン等が策定されている都道府県・市町村はわずか14%でした。ガイドライン等を策定していない1565の教育委員会のうち、55%(856)の教育委員会がガイドライン等の策定予定について「医療的ケア児の転入学が見込まれたとき」、23%(362)の教育委員会が「策定予定なし」と回答していました。
また、下図にまとめたように、幼稚園にも医療的ケア児が特別支援学校(幼稚部)で40名、国公立および私立幼稚園で254名在籍していることが明らかになりました。中でも、国立1名、公立93名と比べても実数だけ見れば私立幼稚園が160名と多くの医療的ケア児を受け入れていることが明らかになりました。学校生活における保護者等の付添いについての調査では小中学校等において30%の医療的ケア児が保護者等の付添があり、特別支援学校の6%と比べて高い付添率であることが明らかになりました。
以下、小篠の感想です。
医療的ケア児の受入経験のない教育委員会が「医療的ケア児の転入学が見込まれたとき」にガイドラインを作っているのでは間に合いません。理由は3つあります。1つ目は、教育委員会には医師や看護師などの医療関係者が不在であり、そうした組織で医療の考え方を含むガイドラインを策定しようとしても外部の医療関係者の意見を仰ぐ必要があり時間がかかるからです。通常の医療的ケアであれば完成までに1-2年程度、常時人工呼吸器装着児童生徒であれば2-3年程度の時間が必要と考えられます。2つ目は、現在通学している児童生徒等が突然事故等により医療的ケア児になる場合があり、災害と同じで発生する前からガイドラインを策定しておくことが必要だからです。最後に、ガイドラインが策定されていない市町村で医療的ケア児を受け入れようとした場合、看護師配置の方法が分からないなどの理由で保護者等の付添ありで受け入れる事態になりがちです。上図でみた通り、学校生活における保護者等の付添率が特別支援学校(6%)と比べ小中学校等(30%)において高いことからもそれが伺えます。全ての都道府県・市町村の教育委員会において医療的ケア実施体制に関するガイドラインが策定されることを期待します。
文責 小篠史郎(熊本県医療的ケア児支援センター 副センター長)