お知らせ

2023年11月26日のスタッフ動き(人工呼吸器装着者の避難訓練)

2023.11.26

熊本市内にお住まいの人工呼吸器装着者の避難訓練に参加・見学しました(小篠・宅島)

熊本市医療政策課が主催し、ご本人・ご家族、自治会長を始めとする自治会の皆様や民生委員、ご近所の方々、区役所の方、訪問看護師、担当の相談支援専門員、基幹相談支援センター、熊本県看護協会、熊本県医療的ケア児支援センター、総勢24名での地域密着型の訓練でした。この方は個別避難計画が策定され、災害時避難行動要支援者名簿に掲載されて民生委員がそれを把握しているケースでした。

まず、自宅のお部屋にご近所の方々に入っていただきベッドからバギーへの移乗を体験していただきました。その後、近くの公民館併設の公園にバギーで避難し、防災倉庫からカセットガス式発電機を自治会の方が取り出して実際に起動し、加温加湿器に給電できることを確認しました(写真)。防災倉庫にはカセットガス式発電機が2台ありました。その後、公民館の中に全員移動し、振り返りを行いました。公民館の中にも大きめのポータブル電源が2台設置されていました。

ご近所の方や自治会長を始めとする自治会の皆様が参加される医療的ケア児の避難訓練で、まさに被災したときに最初に助けてくださる可能性が高い地域の方に人工呼吸器を装着して生活しているところやバギーへの移乗〜避難がいかに大変なことか知っていただいたことが一番の収穫だと感じました。

熊本市医療政策課の集計で熊本市内にはご家族の許可を得て個別避難計画が策定され、災害時避難行動要支援者名簿に掲載済みの常時人工呼吸器装着児者が28名いらっしゃるそうです。熊本県医療的ケア児支援センター・災害時小児周産期リエゾン・災害時小児呼吸器地域ネットワーク熊本県代表の立場としては、こうした取り組みを28名全員について熊本市医療政策課や校区の保健師や自治会と連携し熊本市内全域に広げていければよいなと思います。熊本市外については小児慢性特定疾病医療費助成制度対象の常時人工呼吸器装着児について熊本県子ども未来課が所管している各圏域の保健所が全数把握していますので、県子ども未来課・各圏域の保健所と連携して熊本県内全域にこの取り組みを広げていければと思います。熊本市外の(市内もそうですが)成人した常時人工呼吸器装着者については主に成人の人工呼吸器装着者をよく診ている各病院の脳神経内科と連携していく視点も必要と思います。日本小児神経学会・日本神経学会の学会レベルでは人工呼吸器装着児と人工呼吸器装着者の災害対策について学会同士で情報共有・連携していこうという動きがありますが、都道府県レベルでも今後連携を検討していこうと思いました。

「地域の保健師と自治会、民生委員が主体となり、全ての人工呼吸器装着児者について個別避難計画策定〜避難訓練まで行える社会」を目指すには県や市町と連携・協働してどのような方策が必要か、今回の防災訓練に参加することで多くのヒントを得ることができました。お声掛けいただいたご家族・相談支援専門員に感謝申し上げます。

最後に、避難訓練にあたって参加者の車を駐車する場所の確保が課題になりましたが、すぐ近くの眼科クリニックに相談したところ「休診日なので駐車場を使ってよいですよ」と快く無償で貸してくださったそうです。これもご近所さん同士の共助、ということでよい取り組みと思いました。

文責 熊本県医療的ケア児支援センター 副センター長 小篠史郎

 

写真 = カセットガス式発電機から加温加湿器に給電できるか試しているところ